ドクターコラムDoctor Column

便秘で困らないためには

まず、排便の仕組みを説明します。
 食物は小腸で消化と吸収が行なわれ、泥状になったものが右側の結腸(大腸)に流れ込みます。結腸の中を進むに従い水分が吸収され固まっていきます。
 正常な場合、前日の食物は翌朝には左側上部の結腸に到達しています。次に、胃に食物が入るとこれが刺激となって左側の結腸が収縮し(胃結腸反射)、一気に便を直腸まで進めます。直腸に便がたどりつくと、直腸の壁が広げられることが刺激となり便意が生じます(排便反射)。トイレで力むと腹圧が発生し直腸が圧迫され、同時に直腸も収縮します。この両者の力によって便が押し出され、肛門の筋肉が緩み排便が行なわれます。

 以上から便秘を予防するには次のことが大切です。
 第1に、朝食による胃結腸反射が最も結腸の動きを刺激しますので、朝食をゆっくり十分にとること。
 第2に、便意を我慢することを繰り返すと排便反射が減弱しますので、便意を感じたら我慢せずにトイレに行く習慣をつけること。
 ほかに、規則正しい生活、水分や食物繊維を十分にとること、適度な運動、ストレスをためないことが大切です。

 生活習慣を改善しても便秘が続く場合は下剤を併用します。できるだけ刺激性の下剤(センナやダイオウなど)をさけて、便量を増やしたり、水分量を増やして柔らかくしたりするような下剤をベースに使用します。
 刺激性の下剤は強力な作用なのですが、習慣性があって効果が減弱してくることが欠点で、薬の量ばかり増えて便が出にくいという悪循環に陥り、下剤中毒になる危険性があります。市販の下剤は即効性が求められますので刺激性の下剤を含んだものが多く、長期連用には注意が必要です。

 高齢になると様々な便秘の原因が発生し、その上、消化管機能、体力、筋力が低下してきますので難治性になりやすくなります。高齢になって便秘で困らないためには、若い頃から正しい生活習慣を身につけ、便秘を習慣化させないことが重要と言えます。

 便秘でお困りの方は一度診察を受けてみてはいかがでしょう。

消化器科・副院長 : 能戸 久哉

このページの先頭へ