失神について
失神は短時間(数十秒以内)の急激な血圧低下により、脳全体の血流が少なくなって意識を消失する現象です。一般には「気絶する」、「気を失う」、「脳貧血で倒れる」などと表現されます。通常は数秒から数分以内に意識は回復し、後遺症も残りません。ただし急激な意識消失による転倒や事故につながることがあります。さらに、心臓病が原因の場合は入院治療が必要になることもあります。
失神は起立性低血圧による失神、反射性失神(神経調節性失神)、心原性失神に分類されます。それぞれの失神の特徴を説明します。
1. 起立性低血圧による失神
立ち上がった際に生じる過度の血圧低下により発症します。
自律神経障害や長期の臥床、脱水、飲酒などが誘因になります。
治療としては低血圧を改善するため塩分や水分の摂取、α受容体刺激薬の投与が行われます。
2. 反射性失神(神経調節性失神)
失神の中で最も多く、自律神経の乱れが原因となり、長時間の立位や過度なストレス、脱水、疼痛、飲酒等が引き金となります。
排尿、排便、嚥下、咳嗽、息こらえ、嘔吐などの特定の状況で起こる失神も反射性失神です。
失神を予防するためには長時間立位を避け、塩分や水分の摂取も大切です。
普段のトレ-ニングとしては足の踵を壁から15~20cm離して壁に寄り掛かり、下半身を動かさずに身体を保持します。
慣れると長い時間保持できるようになり、毎日20~30分続けると効果的です。
薬物治療としてはα受容体刺激薬、β遮断薬、鉱質コルチコイド等がありますが状況により使用する薬物が異なりますので医師との相談が必要です。
失神前には前駆症状を認めることも多く、その時点ですぐにしゃがみこんだり、横になる姿勢をとると脳血流の低下を防ぎ、失神を回避することが期待できます。
前駆症状は目の前が暗くなったり(場合によっては白くなる)、血の気が引く感じ、冷や汗、嘔気、気分不快、顔面蒼白などです。
3. 心原性失神
心臓病が原因で起こる失神です。
不整脈による失神が心原性の中では最も多く、頻脈性不整脈と徐脈性不整脈の場合があります。必要な場合は心臓ペースメーカーや植え込み型除細動器を植え込みます。
不整脈以外では冠動脈疾患、心臓弁膜症、肥大型心筋症、心臓腫瘍、肺塞栓症、急性大動脈解離などが失神の原因になります。
院長 : 能戸 徹哉