ドクターコラムDoctor Column

脂肪肝について

 脂肪肝とは余分な糖質や脂質が中性脂肪に変わり、中性脂肪が肝細胞にたまり肝臓全体の 30%以上を占めている状態です。日本人は欧米人に比べて皮下脂肪に脂肪を十分にとどめておくことができないため、脂肪肝になりやすくなります。近年脂肪肝になる人は増加しており、 日本人の3人に1人、また男性の40%が脂肪肝であると言われています。肥満体型ではない方でも、体重が20歳の時より10kg以上増えていたり、短期間で急激な体重増加があると脂肪肝になっている可能性があります。
 以前は脂肪肝は軽い病気と考えられていましたが、近年では放置すると肝硬変や肝臓癌などの深刻な病気に進展する可能性があり注目されています。また、脂肪肝の多くはメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を合併しており、脂質異常症や糖尿病を誘発し、動脈硬化を進行させて高血圧、狭心症、心筋梗塞、脳卒中などを引き起こす危険性も高めます。

脂肪肝の原因

 肥満症(48%)、糖尿病(18%)、アルコールの過剰摂取(18%)が3大原因です。その他(16%)に、 脂質異常症、甲状腺機能亢進症やクッシング症候群などの内分泌疾患、ステロイドなどの薬剤、妊娠、栄養不良状態によるものがあります。

(1) 肥満症

 BMI25以上で30%、BMI30以上で80%に脂肪肝が認められます。また一方で、過激なダイエットを行うと筋肉量が減少して基礎代謝が落ち、逆に肝臓に脂肪がたまりやすい状況を作ってしまいます。低栄養性脂肪肝と言います。

BMI = 体重kg ÷ (身長m)2 で肥満度を計算します。
 18.5未満:低体重
 18.5~25未満:普通体重
 25~30未満:肥満(1度)
 30~35未満:肥満(2度)
 35~40未満:肥満(3度)
 40以上:肥満(4度)

(2) 糖尿病

 血糖はインスリンによって骨格筋、脂肪細胞、肝臓などに取り込まれ、エネルギー源として使われます。脂肪肝になるとインスリンが正常に働かなくなる物質がたくさん産生されるようになり、インスリン抵抗性が生じてきます。インスリン抵抗性が進行すると、高血糖や肥満が 進行してさらに脂肪肝が悪化していきます。

(3) アルコールの過剰摂取

 アルコールは肝臓で分解されますが、その際に中性脂肪が合成されやすくなります。飲酒量がエタノール換算で100g/日以上を5日間以上摂取する大酒家は80%以上に脂肪肝が認められます。エタノール量(g) = 酒の量(mL) X 度数または%/100 × 比重(0.8)で計算できます。
 アルコールの適正量については、ドクターコラムの「お酒は体に悪いのか」もご覧下さい。

脂肪肝の種類

(1) アルコール性脂肪肝

 飲酒量がエタノール換算で60g/日以上を常習飲酒(多くは5年以上)と定義します。アルコールの過剰摂取による脂肪肝は、やがて肝臓の炎症を起こします。このような肝炎をアルコール性脂肪性肝炎といいます。肝炎によって肝細胞が破壊されると、肝硬変に進行し、肝臓癌を発症します。

(2) 非アルコール性脂肪肝

 飲酒量がエタノール換算で男性30g/日未満、女性20g/日未満のかたです。日本人の脂肪肝の原因で最も多いとされているのは、アルコールではなく、過食、運動不足、肥満、糖尿病、脂質異常症によるものです。非アルコール性脂肪肝の20~30%が肝臓の炎症と繊維化を生じて予後不良な非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:nonalcoholic steatohepatitis)となり、肝硬変や肝臓癌に進行するリスクがあります。特に、糖尿病のある方は肝硬変で亡くなるケースが多いので注意が必要です。
 非アルコール性脂肪肝については、ドクターコラムの「非アルコール性脂肪性肝疾患」もご覧下さい。

脂肪肝の検査

 最も簡便な検査法は超音波検査です。血液検査のALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTP、コリンエステラーゼの上昇で疑い、超音波検査で診断します。
 NASHの確定診断には細い針を肝臓へ刺して肝臓の組織の一部を採取して調べる肝生検という検査が必要となります。
 繊維化進行例を予測するスコアリングシステムにFIB-4indexがあります。AST、ALT、血小板数、年齢で計算できるため、当院では肝機能障害や脂肪肝のある方は全員行っています。

脂肪肝の治療

 アルコール性であれば禁酒が基本です。禁酒が困難な場合には、適量に節酒し、週1‐2日の休肝日を設けてください。栄養障害を伴っていることが多く、栄養指導も必要になります。
 非アルコール性の場合は、原因となる肥満や生活習慣病の治療が基本です。NASHへの進行を阻止するための薬物療法も必要になってきます。
 非アルコール性の場合は、糖質や脂質はなるべく控えてください。ショ糖や果糖は他の炭水化物と比較して脂肪肝になりやすいです。肥満の方は全体のカロリー制限もしてください。運動習慣を身につけて過剰なエネルギーを消費してください。無理のない範囲で適度な負荷をかけながら行う有酸素運動は、エネルギー消費に効果的です。ジョギング、水泳、サイクリングなどがおすすめです。また、脂肪は筋肉によって燃焼されるため、筋トレで筋肉量を増やすことも脂肪肝の解消につながります。

副院長 : 能戸 久哉

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