ドクターコラムDoctor Column

間質性肺疾患とは?

 肺の病気というと肺癌などの悪性腫瘍や細菌やウイルスによる肺炎、呼吸音がヒューヒュー(喘鳴)して呼吸が苦しくなる喘息、喫煙や有害物質を吸って気管支や肺胞が傷害を受けるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)がよく知られていますが、肺組織の中で間質(肺胞の壁)がダメージを受ける間質性肺疾患と呼ばれる症候群(原因不明ながら共通の病態を認める疾患群)があります。

分類

重要カテゴリ- 代表的疾患
特発性間質性肺炎 特発性肺線維症、非特異性間質性肺炎、特発性器質化肺炎
過敏性肺炎  
膠原病に伴う間質性肺疾患 関節リウマチ、多発性筋炎/皮膚筋炎、強皮症
医原性間質性肺疾患 薬剤性肺炎、放射線肺炎
職業に伴う間質性肺疾患 じん肺、過敏性肺炎
サルコイドーシス  
好酸球性間質性肺疾患 慢性好酸球性肺炎、急性好酸球性肺炎
遺伝性疾患 家族性肺線維症、Hermansky-Pudlak症候群
原発性疾患 肺ランゲルハンス細胞組織球症

上記のごとく間質性肺疾患という症候群には多くの疾患が含まれます。この中で、一般診療で重要と思われる疾患について解説します。

① 特発性間質性肺炎

 胸部レントゲン検査で網状やすりガラス状陰影が出現するも、原因が特定できない場合、特発性間質性肺炎と診断されます。発病初期は無症状ですが、咳嗽や呼吸苦が出現した時点ではある程度病気が進行した状態です。特発性間質性肺炎の中には、間質の硬化(線維化)が強く進行して呼吸不全(息切れ、呼吸苦)に至る症例があり、特発性肺線維症と診断されます。

② 過敏性肺炎

 特定の抗原を含むほこりを反復吸入することで発症するアレルギー性の間質性肺炎です。原因物質(アレルゲン)はカビ、真菌、飼っている鳥の羽毛や排泄物で、短時間で症状が悪化する急性型と、アレルゲンの量が低濃度の場合はゆっくりと悪化する慢性型があります。慢性型になると肺の繊維化が進行するため治療が難しくなります。古い木造家屋に増殖する真菌がアレルゲンとなり発症する夏型過敏性肺炎は日本特有の疾患です。

③ 膠原病に伴う間質性肺疾患

 関節リウマチ、多発性筋炎/皮膚筋炎、強皮症などの膠原病(自己免疫疾患)にしばしば間質性肺炎を発症します。 初期は無症状ですが進行すると咳嗽、労作時呼吸困難などを認めます。膠原病治療中は定期的に胸部レントゲン検査を受けることが大事です。

④ 薬剤性肺炎

 内服中の薬剤が、まれに肺に障害を引き起こすことがあります。なかには致死的な呼吸不全をきたすことがあるため、薬の副作用の確認が大事になります。
 薬剤性肺炎の発症率が最も高い薬剤は、抗悪性腫瘍薬で、その他、関節リウマチ治療薬、抗微生物薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、向精神薬、抗不整脈薬などです。

⑤ じん肺

 粉じんを吸入することで肺に繊維増殖性変化(異物を除こうとして肺の中で繊維が増殖し、増殖した繊維が固くなる)を起こし、酸素を取り込む能力が低下して呼吸困難を引き起こします。
 原因となる粉じんは石綿(アスベスト)、遊離珪酸(シリカ)、石炭、炭素、酸化鉄、アルミニウム、ベリリウムなどです。

⑥ サルコイドーシス

 リンパ節、肺、皮膚、眼球、心臓、神経、骨、腎臓、消化器など全身の諸臓器を侵す肉芽腫性疾患で、原因は不明ですがアクネ菌に対するアレルギー反応の関与が推定されています。肉芽腫とは刺激物質を処理するために生体が反応して形成される炎症性の腫瘤です。肺病変は上肺野優位で、病変が進行すると線維化が高度になり、咳嗽や呼吸困難を生じます。

診断・治療

 喀痰、息切れが続く場合、聴診器で肺の音を確認します(バリバリ、パチパチという音がすることがあります)。胸部X線検査で、粒状や網状の影を認めたら、次に、CTで細部の状態を確認します。一方、呼吸機能の状態を把握するために呼吸機能検査(肺活量、1秒率など)を行います。さらに、病名を確定するために必要な検査(自己抗体やアレルゲンなど)も検査します。
 治療は病気の種類や病気の進行具合により治療薬(原因を除去する薬剤や呼吸機能を改善する薬剤など)が変わります。
 胸部X線検査で異常を指摘された場合は、放置せずに専門医による精密検査を受けましょう。

院長 : 能戸 徹哉

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