ドクターコラムDoctor Column

睡眠時無呼吸症候群の合併症について

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)は睡眠中に何度も呼吸が止まる病気です。日本には900万人以上の潜在患者がいるといわれています。症状は就寝中のいびき、日中の倦怠感、眠気、頭重感等です。また朝目覚めた時に熟睡感が無いのも特徴の一つです。

これらの症状とは別に、SASにはいろいろな病気が合併しやすい事がわかっています。睡眠中の無呼吸によって体の酸素不足が起こり、交感神経や酸化ストレス、炎症反応の活性化、糖質コルチコイド(血糖を上昇させる)の分泌亢進が起こり、これらが原因となってさまざまな病気を引き起こします。
SASの合併症について解説します。
SASの診断・治療に関してはドクターコラムの「睡眠時無呼吸症候群とは?」 をご覧ください。

1.高血圧症

自律神経には交感神経と副交感神経がありますが普段睡眠中は副交感神経が優位に働きます。しかし、SASでは睡眠中の繰り返す無呼吸により、交感神経が亢進することで血圧が上昇します。降圧薬を飲んでいても血圧が下がりづらく、睡眠中のいびきを指摘されている人は、一度SASの検査を受けることをお勧めします。

2.糖尿病

SASがあると糖尿病の発症率は1.6倍になるといわれています。
睡眠中の無呼吸による交感神経の活性化、酸化ストレスの亢進、糖質コルチコイドの分泌亢進が起こり血糖値が上昇します。またSASではインシュリン抵抗性(インスリンの効きが減弱する)が進むといわれており、これらが原因となって糖尿病が発症します。

3.肥満症

SASの患者の約70%が肥満を合併しており、逆に肥満症の40%がSASに罹患しているといわれています。肥満になると頸部の皮下脂肪が増え、気道が狭くなるためSASを発症しやすくなります。特にBMIが30を超えるとSASの合併が増えるといわれています。

4.心疾患

SASに合併する高血圧や糖尿病は動脈硬化を進めます。また、睡眠中の無呼吸により交感神経の活性化や体内の酸化ストレスが亢進し、これが血管を傷害させ動脈硬化を進めます。動脈硬化が悪化した結果、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)の発症リスクが高まります。さらにSASの患者は心機能が低下する心不全や不整脈の合併も多いといわれています。

5.脳卒中

SASの患者では、冠動脈と同様に脳動脈の動脈硬化も進みやすく、脳梗塞のリスクが高まります。またSASの患者では高血圧が悪化しやすいため、高血圧が原因で起こる脳出血のリスクも高まります。

院長 : 能戸 徹哉

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